準備預金付利のマネタリーベースへの影響

この前、うちんちが取り上げられたとき、本石町日記さんところで「考えてみる」と書き込んだものの、とりあえずはよく分からんので、いくつか論点をあげておく。
そのうちまとまるといいなあ、と思いつつ。
#確かに考えておくべき事柄だとは思うんだ。

  • まずは預金準備率操作を考える。

預金準備率を引き上げたら、その瞬間はマネタリーベースが上がるだろう。
でもこれは金融引き締めということでいいよね。

  • つぎに政策金利がゼロの状態での預金準備率操作を考える。

ゼロ金利政策下において、預金準備率を引き上げるとする。
やっぱりマネタリーベースは上がるだろう。
でもこれは金融引き締めだよね。
#いや、銀行の実質的なB/Sに影響を与えないから単なる無意味ではないか。

  • じゃあ、こんな場合はどうだろう。

ゼロ金利政策下において、預金準備率は引き上げないけど、超過準備をさせるべく
資金供給オペを打ち続けてみる。
この前ネタにした通り、銀行は超過準備に見合う額を日銀から資金供給を受け、そのまま当座預金においておく。
これってマクロ的にみればマネタリーベースは上がるんだけど、事後的にみれば預金準備率を引き上げているのと
同じじゃないかな?(どうだろう)
#少なくとも上記の預金準備率操作した結果と同じ結果となるように当座預金残高目標をおいてみると良い。

  • ゼロ金利下における思考実験は。。。

この一連の考え方は資金吸収の場において準備預金付利と売りオペによる資金吸収との違いを考察する際に有効ではないか。


・・・うーん、ぶっちゃけてしまうと、確かに中央銀行はマネタリーベースを操作することは可能だと思うんだけど、だからといってマネタリーベースとマネーサプライの関係が常に一定であるとは限らない。マネーサプライとの関係を変化させる形でのマネタリーベース操作が預金準備率操作であり、準備預金付利であると考えればどうだろう。

  • 当然、この考え方はかつての要的緩和や現在の質的緩和に対しても有効であろう。

つまりかつての量的緩和はそれまでのマネタリーベースとマネーサプライを崩す形で、下手すると金融引き締め効果すらあるのではなかろうか。ただ、金融市場が混乱していて、銀行間取引ですら機能しない場合は、中央銀行がそれを肩代わりすることによって市場機能をバックアップすることを通じて、金融緩和を達成することができる。

  • つまり量的緩和は現在の質的緩和の内側にある一方策にすぎない。

でもって、現在の米国では銀行間取引は機能しているので量的緩和は実施する必要がないが、信用セクターの一部には機能不全が残るので、FRBが市場機能を代替する。




うーむ。いつの間にか準備預金付利から量的緩和の議論になってしまった(汗)
今回の結論だと「量的緩和はデフレ解消にはつながらない」という身もふたもない結果になってしまう。。。
ま、今回は国債買い切りによる「金融政策の財政政策化」とかイールドカーブに与える影響とか
アナウンスメント効果とか「時間軸効果」とか為替市場への影響とか、それこそいろんなものを
わざと落として考えて、単純に「マネタリーベースの増加が金融緩和を意味するか」だけに
絞って考えている思考実験なので、その辺りは誤解して欲しくないんだけど。




でも、意外といい感じかもしれない。
なお、今回付利されたために吸収された資金をマネタリーベースから差し引くという、いわゆる
「実質化」というのは考えなかった。だってお金に色はついてないし、預金準備率操作と比較したときややこしくなる。
#米国みたいに他国市場でのドル供給をどう考えるかとか言い出したらきりがないし。


とりあえず今日のところの結論としては
「マネタリーベースの増減と金融緩和を結びつけるのはやっぱ無理がありそうだ」ということで。
#また暇なときに考えてみよう。




(追記)
ああそこ、「『マネタリーベースとマネーサプライの関係』なんか、昔から議論されているようなネタじゃねえか」なんていうつっこみには愛がないので許してください(平伏)
俺もアップしてから「そういやそうだわ。この辺り長々と書いたところで無意味だったかも」とか思い返して落ち込んでいるところです(しくしく)