だからマスコミのいうことをそのまま信じちゃダメだってば(汗)

えー、bewaadさんの日銀批判記事に対してあえて擁護論陣を張ってみる。


bewaadさんは11月30日の野田審議委員の発言について、日本経済新聞の記事を

日銀の野田忠男審議委員は30日、岡山市で記者会見し、今後の消費者物価の上昇率が低い水準にとどまっても「利上げの判断に影響しない」との考えを示した。次の利上げ時期は「年内、年明けを含めて白紙の状態」と述べたうえで、「経済指標を総合的に検討して結論をだす」と語った。

12月1日に10月分の全国消費者物価指数(CPI)が公表される。前月の上昇率は価格変動が大きい生鮮食品を除くと0.2%。市場が日銀の利上げ時期を予想するうえで大きな材料となる。ただ野田委員は利上げの判断は「物価だけではない。仮に将来の物価が現状の水準でも、ほかの経済指標の先行きもみる」との認識を示した。

日経「野田日銀委員、消費者物価上昇率低くても「利上げに影響なし」」

という風に引用した後、

しかし私たちが住むこの極東の島国の中央銀行において金融政策決定をつかさどる人の中には、現在のみならず将来の物価上昇の懸念がなくても利上げをする可能性を認める人間がいるわけです。現在物価上昇がなくても、将来物価上昇のおそれがあるから、というのであるならまだ納得もしましょう(本当にそのおそれがあるなら、ですが)。しかし、そのおそれもないのに利上げをするとは、この中央銀行の使命は何なのでしょう。

(出所)Bewaad Institute@Kasumigaseki [BOJ]物価動向を無視することもあると公言する日銀の審議委員

と批判しています。でも野田審議委員は本当に「現在のみならず将来の物価上昇の懸念がなくても利上げをする可能性を認め」たのでしょうか。
これに関しては日銀のHPに記者会見の要旨が載っていますから、きちんとそこで確認してみましょう。
なお元になった質問は3点の質問が続けて行われており、その第3点目が今回の焦点に当たります。

(問)
3点目は、物価の基調を重視するとの考えのもとで、表面的なコアCPIの伸びが低いままに止まっていることは、近い将来の利上げを妨げる要因になるのかどうかについてお伺いします。

(答)
3点目ですが、コアCPIの水準自体はプラスであります。懇談会での挨拶要旨や展望レポートで示している通り、緩やかな上昇を辿ると考えておりますが、仮にこの水準に止まったとしても、私どもの判断は、現状の物価水準だけではなく、経済の実態や成長のトレンド、あるいはこれらの先行きの見通しなどを総体でみています。いわばフォワード・ルッキングにみていますので、ただ物価の水準だけの一点をみて判断しているわけではありません。近い将来、コアCPIがこの水準に止まったとしても、政策変更の判断にそれ自体が影響を与えるものではないと考えています。


(出所)日本銀行野田審議委員記者会見(11月30日)要旨(PDF,26KB)

・・・えーと、少なくとも俺の目には「現在のみならず将来の物価上昇の懸念がなくても利上げをする可能性を認め」たとは読めません。
確かに「近い将来、コアCPIがこの水準に止まったとしても、政策変更の判断にそれ自体が影響を与えるものではない」とは述べておられますが、その前段にきちんと「仮にこの水準に止まったとしても、私どもの判断は、現状の物価水準だけではなく、経済の実態や成長のトレンド、あるいはこれらの先行きの見通しなどを総体でみています。」と言っているではありませんか。


これならば「現在のみならず将来の物価上昇の懸念がなくても利上げをする」なんて読むべきではないと思います。少なくとも「将来にわたって物価上昇の見込みがなくても利上げを断行する」という風には読めないです。
もっと単純に「現在のCPIの水準が問題なのではなく、経済全体として今後どのように推移していくのかが問題なんだ」と素直に取ってやるべきではないでしょうか。そりゃそうでしょう、「一時的にCPIがこの水準にとどまったとしても、またすぐに上昇を続ける」そんな状態であるのならば利上げを行うにも妥当性は生じるのではないでしょうか。それこそbewaadさんのおっしゃる「現在物価上昇がなくても、将来物価上昇のおそれがあるから、というのであるならまだ納得もしましょう(本当にそのおそれがあるなら、ですが)。」という意味ではないでしょうか。


もちろん、野田審議委員は「展望レポートで示している通り、緩やかな上昇を辿ると考えております」と述べており、この判断の妥当性(=日銀の景況判断の妥当性)に対する批判はあろうかと思います。私個人も今の日銀の物価見通しは楽観的過ぎると思います。
とはいえ、批判するのであればきちんと「CPIの上昇を予想する」日銀のシナリオ構築そのものを批判すべきであって、マスコミの見出しに踊らされる格好で、筋違いなところを攻めるべきではないと思います。




・・・とキツメの意見で攻めてみましたが、本当はこういう「利上げ催促モード」丸出しな記事を書くマスコミの方が問題だと思うよ。
俺たちマーケットで生きているばくち打ちは、こういった「正確に報道されないポジショントーク」にはうんざりしてるんだよ。
酷いときには「明日にも金融政策変更か?」なんて煽りまくるんだよな、誰が書かせるのか知らないけど。
#たまに「この会社が書かせた」とかいう噂が流れたり流れなかったり。。。