コメントを頂いたのでレスってみる

害債さんから丁寧なコメントを頂いてしまったので更にレスしてみる。
#ありがとうございます>害債さん




えー、私が言いたかったのは(繰り返しになっちゃいますが)

アセットアロケーションは委託者が長期的な年金数理を考えながら行っています。
でもって大手運用機関は別組織として年金コンサルティングを担当する部署を作って、コンサルの一環としてやっているのが
現状なのです。

外資系の運用機間だって日本市場においては同様の運用を行っていたりするのです。
それには日本における年金市場の特性があり、その特性は年金基金側の合理的な思考の結果である公算が高いのです。




なお、害債さんが提示された「ベンチマーク運用は顧客や社会の利益と合致しているのか?」というのは結構重要な指摘です。
実際、運用現場でもしばしば議論の対象になります。
以下、ここには投資のプロでない方も来られると思いますので、やや基礎的な話をしながら進めます。


上記の問いに対しては2つの要素を考えなければなりません。第一の要素は「銘柄選択することの是非」です。
パッシブ運用はともかくアクティブ運用においては何らかの形で銘柄選択を行っています。
それは必ず「ベンチマークに追随しない」という点においてリスクを背負うことになります。
もちろん私も銘柄選択を行うこと自体は極めて有効な投資戦略であると思われるのですが、このことは当然ながら
ベンチマークを下回る」イコール「顧客資産を損失を与える」リスクを背負っている訳です。
#だからアクティブ運用においては「リスクコントロール」が課題となります。


じゃあ、パッシブ運用において銘柄選択を行うことは絶対にないのでしょうか。
実際問題、大抵の運用機関はやっていると思います。例えば財務状況の悪化により上場廃止が確定的となった株式は
事前に売却を求められることが多いです。また債券パッシブファンドはベンチマーク内の銘柄数が数千銘柄に及ぶ
場合も多いため「物理的に」買えない。(それでもベンチマークに追随出来るようにするのは
ファンドマネージャーの腕というやつですね。)
問題は「社会的な不祥事」とか「社会的に公正でない」と見なされる企業をどう判定するか、ですね。
例えばパチンコ台を作っているメーカーは「社会的に公正でない」といいきれるでしょうか。
消費者金融はどうでしょうか。あるセクションにおいて談合したことが発覚した建設会社はどのセクションも
否定されなければならないでしょうか。極端なことをいえば社会保険庁の不祥事があったからといって、社会保険庁の属する
日本政府の発行する国債を購入しない、という選択肢を取ることは出来るのでしょうか(笑)


社会保険庁の例は極端すぎるのでそこまでやる必要はないと思うけど)これって結構難しい問題です。
まあ大抵の場合、事前に顧客と協議して運用ガイドラインを作成し、その中で基準を明確に示すことに
なると思いますが、「社会的公正でない」という判断は非常に限定的に行われると思います。


第二の要素は「社会的公正を基準とした銘柄選択はパフォーマンスを向上させるか」という問題です。
実はこれ、意外と難しい判断を求められます。例えば90年代後半、大抵の年金基金では「社会的公正」の立場から
消費者金融への投資には消極的でした。その結果、債券市場において消費者金融が債券を発行すると同程度の格付けを有する
他業種の企業よりも大きいスプレッド(上乗せ金利)を要求されました。
しかし、一部の運用会社はこの大きくなったスプレッドをみて「割安である」と判断して積極的に投資、見事に高パフォーマンスを
獲得することが出来ました。このことは「社会的公正の立場で敬遠された企業にはプレミアムがある」と考えることが出来る好例です。


じゃあ、最近成功している「SRIファンド」はどうでしょうか。これに関しては2通りの見方が出来ます。
「社会的責任を果たす企業はブランドイメージが良いから業績が上がる」という考え方、
もう一方は「業績が上がる素養のある企業だから余裕ができるので社会的責任を果たすことが出来る」という考え方です。
まあ「ニワトリと卵」の関係、と言ってよいと思うんですけどね(汗)


正直、難しい問題なのですが、ファンドマネージャーとしてはある一定のレギュレーション(ここで運用機関が果たすべき
「社会的責任」についても明示されるのが理想)のもとで顧客資産の極大化を目指すのが正しいあり方だと思っています。
(委託者から資産を預かって運用する、他人勘定のファンドマネージャーは委託者の代理人なのです。)


その目的を果たすためには「社会的責任を果たす企業を選択する」のが正解であることが幸せなんだろうな、とは思いますけど
いつもいつもうまくいくとは限らないのがこの業界の難しいところです(汗)
#つか、世の中には「国債だけに投資するファンドを作ってくれ」という顧客もいるから、そもそも企業を選択することが
#出来ないファンドマネージャーも実在するのはご愛嬌(苦笑)