公的年金の株式運用対象拡大について

いまさらとは思うけど、お金について考えたこととこ経由でミズタマのチチさんのコメントに対して答えてみる。
まぁ、ここら辺はおしごとに思いっきり関係しているので答えやすいし。
#とりあえずミズタマのチチさんの6つの不安に対してコメントしてみますか。

  • 「運用失敗による訴訟沙汰」の件

詳細を知らないので具体的なコメントは出来ないのだが、多分それは運用会社側に重大な落ち度があったケースではないだろうか。
例えば「不祥事等により重大な経営危機が表面化した場合、即座に売却する」と約束してたのに実行しなかった、とか「本来保有してはいけない株式を保有していた」とか。普通、運用会社と委託元の基金との間ではきちんとした「運用ガイドライン」を設けて、運用会社はその「ガイドライン」に従って運用するのだが、そのガイドラインを見落としてやってはならないことをした、というもの。
ある意味これは本件とは関係ないはなしだと思う。
が、ファンドマネージャーならガイドライン違反なんて「もっての他」なのはいうまでもない。

まぁ、確かに東証第1部より第2部や東証マザーズジャスダック市場は変動性は高いのは事実。
でも資産運用における「リスク」はポートフォリオ全体で考えるべき。海外資産を20%持っているのと新興市場に2%保有しているのとどっちが危険かと聞かれれば「海外資産かなぁ」という第一印象が浮かぶでしょ。
#実際にはその内容を精査しないと良く分からないんですが(ぉ


要するにポートフォリオ全体のリスク量を増加させずに新興市場への投資をする方法だってあるってこと。他のリスク資産(例えば東証第1部の株式投資)をもっともっと減らして現金保有を増やせばいいんだから。


まぁ、実際のところ年金基金運用基金のような巨大ファンドに関しては、全力を傾けて投資するわけにはいかないから「ちょっとだけやってみる」って感じになる(=ほんの少しだけリスク量を上げてみる)と思うんだけどね。

  • 運用体制について

そりゃ運用体制の確立している運用会社を選定して任せることになるでしょうね。
なお上でも少し書いていますが委託元の年金基金と委託先の運用会社との責任分担については、運用開始前に必ず「運用ガイドライン」を示して運用会社はその範囲内の運用を行うのがルールです。契約内容によってさまざまなパターンが存在しますので一概には言えませんが、例えば「東証第1部の株式に対して投資をしてTOPIXを上回る収益を上げてくれ」とだけ言われて運用資金を預かった場合、「株式市場全体の収益率が悪化したために生じたパフォーマンス悪化」は委託元の基金、「業績の悪化した会社を選択してしまったために生じたパフォーマンス悪化」は運用会社の責任といえます。
#実際にはもっと細かく「運用ガイドライン」を定めていきますから、そんな単純な話ではないのですが。


ただし、大抵の場合「利回り保証」契約は交わしていないので「そんな下手くそな運用会社に任せてしまった責任」は委託元の基金が取ることになります。もちろん「運用ガイドライン」違反したようなケースは別ですが。


そうそう、一応念のために言っておきますが、運用会社は「生半可」な気持ちで運用はやっていません(当たり前)
パフォーマンスが悪いと当然のように契約解除になってしまいますから。
もちろん契約解除が続くとリストラされます。すべて数字で出てしまう世界なだけに、皆さんが思っている以上に厳しい世界です。


指標については東証第2部ならTOPIXの第二部株価指数(リンク先の下の方をご参照)とかきちんと整備されているものを使えばいいのではないかと。
他にも「ベンチマーク(=戦う相手)はTOPIX」で大多数の運用対象は東証第1部だけど、「ファンド総額の5%までなら第2部の株式を対象にしても良い」みたいな限定した使い方を取ってみるのを良くやるやり方ですね。

  • 賦課方式との関係

本当に「賦課方式」というのであるならわざわざ株式運用する必要がないばかりか、そもそも「年金危機」自体存在しませんが(笑)
少子化の影響により「将来の年金受給者の受け取れる年金額」減少するだけ。
ミズタマのチチさんがかっこ書きでおっしゃっているように将来の年金受給者のための投資と考えるべきではありますね。
誤解を恐れずにぶっちゃけてしまえば「現在の年金財政は丼勘定」なんですね。
完全な賦課方式でもないけれど、完全な積み立て方式でもない、という意味において。

  • 「幅広い産業の活性化を促すこと」の意味

この点だけは全面的に同意。ま、建前として書いとけば政治家さん達の受けが良いかな、という程度。
資産運用というのはあくまでリスクとリターンとの関係を計りつつ、冷静に行っていくものです。今回の話は運用対象を広げることによって新たな市場でも収益を得られるようにしていこう、という観点で投資判断されるべきであると考えます。




そうそう「お金について考えたこと」さんの「規制緩和のたびの高値掴み」についても解説。そりゃ、ある意味当たり前の話なのでして。
というのも規制緩和は「xx年度から規制緩和」という情報が事前に業界内に流れるんですよね。としたら「規制緩和前」に「先回り」して「買ってしまっておく」ことが出来れば儲かるような気がしませんか?
そうなんです。規制緩和の情報が流れると、当然ながら規制に関係ない人は先回りして当該株を買っておくのです。でもって高値で売り抜ける。
これを後から見たら当然のごとく「規制緩和直後が一番の高値」に見えるでしょうね。実際に年金基金規制緩和にどう対応したかは別として。