決定会合

さてさて、今回も言葉が踊っていますなあ、という感じの決定会合でした。
特にこの辺りとか。




でも、今回はやはり総裁会見こそが肝だったと思います。
もっとも大抵の場合、決定会合後の会見録はきちんと目を通しておくのが中央銀行ウォッチングのたしなみではありますが(ぺこり)




とはいえ、会見内容の読み方そのものはドラめもんさんにお任せするとして、
こちらではポイントをかいつまんで読んでみたいと思います。
#以下「P〜」というのは日銀HPの総裁会見録PDFのページ数を示します。



  • P6「何か実質を変えたということではありません。」

みんなが一番見落としがちな文言はやはりこれでしょう。これは「従来の「0~2%程度」という表現では何が問題だったのでしょうか。」という問いに対する回答で出てきています。
これを素直に読むと、これまでと何も変わっていない、ということに気付かされます。
この「変わっていない」という表現はその後の回答でも強調されています。



  • P3「枠組み全体として効果がある」

この表現は、話題となった「い意味で時間軸的な効果と呼ぶのであれば、そうした効果はある」という回答の直後に「ただし」書きとして加えられたものです。
そしてこの「枠組み」とは「展望レポートで示している経済・物価の先行きの見通しや、毎回の決定会合後に公表している金融政策運営方針とともに、物価安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透すること」と直前に答えているんですね。
今回は「物価安定に関する日本銀行の考え方が一層浸透すること」を求めていると見ればいいのでしょう。


でも、このP3の回答は、本当に分かりにくいですね。
前段では「別に何も判断を変えてないよ」といいつつ「このことがよく理解されたら時間軸的な効果が出るんじゃないの」と言っているんです。
個人的には禅問答に近いやりとりのように感じてしまいます。


しかし、これは教科書的に読む方がいいような気がします。
「今の枠組みは将来の政策金利パスを推測しやすくしているから、その結果として時間軸的な効果が出てくる、というのが一般的な理解ですよ」と。
というのもP12下段にて「債券市場は誤解してるのか」といったようなそのものズバリな質問がなされ、それに対しては
「市場参加者の特定の見通しについて正しいとか正しくないと申し上げることは、そもそも適切ではない」とはぐらかしているんですよね。
あれだけリップサービスしてくれている総裁がこの部分でははぐらかす。これは「今回の対話の相手は債券市場ではないですよ」と言っているように感じるのは私だけでしょうか。




実際問題、債券市場は今回の話の前からずっと「中長期的な物価安定の理解」を読んできましたが、誰も「日銀はCPIのマイナスを許容している」などと読んだひとはおられないと思います。
#「もっと強い表現にすべき」とか「もっと目線を上に上げるべき」というひとはたくさんいましたが。


ということは今回の声明文を出した相手は債券市場ではない、と見るべきでしょう。
#もちろん「アナウンスメント効果」で短中期ゾーンの金利が下がっても、日銀的にはそれはそれで歓迎だとは思いますが。




今回の件は「声明文」として考えるからややこしいのです。単なる対外説明の一環というか、前回同様、ラベルの張替え作業と考えておく方が無難だと思うのです。
何故そう思うのかって?
だって、今回何も具体策取ってこなかったやん?
今の状況が問題なら、そして断固たる措置が必要なら、何らかの施策を打ち出してしかるべきところ、何もしなかった(というか出来なかった?)ということが全てだと思うのですよね。