なぜ日銀は弱いのか

いや、ドラめもんさんところで話題にしていただいた日米金融当局への評価の差はどこからきたのだろう、っていうのは常々考えていたところです。
例えば、リーマンショック以降のFRBの行動にしてみても、いつもいつもほめられた行動をしていた訳じゃない。
国債購入にしたって、12月から延々引っ張っておいて、実際に買い出したのは低金利で短期市場を
じゃぶじゃぶにし終わった3月からと遅い訳だし、そのくせ買い出すと長期金利は容赦なく上がる(笑)
#しかもなぜそうしたのか説明はよくわかんなかったりする(汗)


・・・でも、バーナンキはそう批判されていることもなく(そりゃ、これだけ景気が悪いんだから批判も多いのは当然だが、あそこまで非常措置を
取りまくった割には評価高いと思うよ)再任までされちゃうんだよな。




一方、我が日銀・白川総裁を見てみると、別に国内の大銀行をこかした訳でもなく、むしろG7では金融危機時の対策についての議論を
リードしたような節さえうかがえ、今回のCP・社債オペの件だって、公式には

席上、私からは、わが国の金融情勢に関して、CP・社債の発行環境が大きく改善しており、 日本銀行のCP買入れも大幅な札割れが続き、政策に支えられている面は後退していること を説明しました。
(出所:日本銀行「総裁記者会見要旨 (10月3日)」

と、一応事実の説明にとどまり、「オペをやめる」とか「やめるべき」とか言い出した訳ではない。
でも「寝言を言うな」と叩かれるんだな、これがまた(汗)
#うちんちでもこんなこと書いて叩いてるけどね(汗)




でもって、どうしてこんなに差が出るのかなあ、と考えて、思いついたのは、やっぱり「バーナンキは役者やのう」ってことですね。
この辺り、やっぱりドラめもんさんに同意な訳ですが、やっぱり彼は政治家として動いていて、うまく立ち回っている印象を受けます。
そしてそれが彼への信頼感へつながっているのではないかと思うのです。


これに対して日銀はどうも政治が下手なようでして、ついつい愚直に動いてしまう気がします。
そういえば1年前の6中銀の協調利下げのときもそうでした。
別に日本市場はパニックになっておらず、既に短期金利も0.5%と低いのに「利下げをしない」と叩かれるんですね。。。




ただ、日銀にも同情すべき点はあるかと思います。
それは短期金利水準の絶対的な低さです。
1995年以降、無担保コールO/Nものの誘導目標は0.5%以下です。
この0.5%というのはBOEが「低すぎる政策金利は市場の機能や銀行の貸出余力に対して逆効果を及ぼす」と言って利下げを打ち止めにした水準なのですよ。
それよりも低い水準で金利を上下動させても、実体経済に影響を与えるのは限定的にならざるを得ません。
#実際、内閣府経済社会総合研究所出の研究では政策金利を1%上げた際の乗数効果GDPを0.4%引き下げるとみています。
#(出所:「短期日本経済マクロ計量モデル(2008 年版)の構造と乗数分析」


ということは、日銀はこの15年間、金融政策で経済成長をコントロールできた実績がない訳です。
しかも財務省や政治家からの独立を勝ち取ったのは、0.5%になってから(汗)
まるで夜、山の上のホテルで自由行動時間を得た高校生みたいなもので、どうしようもないものです(笑)


そういうと「量的緩和して円安にしないのが悪い」とかいわれそうですが、そもそも日銀に為替調整の権限はないので為替介入は出来ず、
それ以前にベースマネーの増減が即為替変動につながる訳ではないのはこの一年のFRBのB/Sをみれば明らかでしょう。




結局、手が尽きているために、ミクロでおたくな説明をしなければならなくなり、これが日銀への信任を失わせているような気がします。
#でも中央銀行がこれだけ叩かれているのに為替が最強な国は日本だけであろう(大笑)